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【再生医療等製品】日本で承認された9製品を見てみよう!【2020/6/25現在】

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先日の記事では、再生医療等製品の基本や開発トレンド、課題について考えてみました。

今日は現在日本で承認されている9製品について、どこの会社のどんな製品なのか?といった点を一緒に見ていきましょう。

 

個々の製品について、別途記事にしている場合はそちらに飛ばします。

また今後詳細を記事にする場合は改めてそちらに飛ばします。

いわゆる私のサイト内の、「日本における再生医療等製品に関するアンテナ記事的な位置づけ」の記事です。

 ヒットした記事の後はいつもやりづらいのですが、平常運転で行きますのでよろしくお願いします。

記事内容的にはいたって真面目な記事であります。

 

参考:再生医療等製品の基本について

 【細胞】再生医療等製品ってなに?どんなものが含まれるの?【遺伝子】

 

 

 

ヒト(自己)表皮由来細胞シート「ジェイス」

・承認年:2007年

・企業:J-TEC

・適応:重症熱傷、先天性巨大色素性母斑など

・薬価:採取・培養キット438万円/調整・移植キット15万1000円/枚

・一言コメント:

患者さん自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養し、シート状に形成して患者さん自身に使用する自家培養表皮」になります。

つまりオーダーメイドで作成する培養表皮ということです。

 

本製品を移植すると、移植された本人の表皮細胞が生着することによって傷口部分が上皮化し、速やかに閉鎖することができるとのことです。

いわゆる「再生医療」っぽい製品ですよね!

 

ヒト(自己)軟骨由来組織「ジャック」

・承認年:2012年

・企業:J-TEC

・適応:膝関節における外傷性軟骨欠損症、離断性骨軟骨炎

・薬価:採取・培養キット87万9000円/調整・移植キット125万円

・一言コメント:

患者さんから採取した軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者さん自身に適用する「自家培養軟骨」になります。

こちらもジェイスと同じく、オーダーメイドで作成するものですね。

軟骨欠損部位や炎症部位に移植することにより、臨床症状の緩和が期待できます。

こちらもいかにも「再生医療」なイメージの製品かと思います。

 

ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞「テムセル」

・承認年:2015年

・企業:JCRファーマ

・適応:造血幹細胞治療後の急性移植片対宿主病GVHD

・薬価:86万8680円(1バッグ)

・一言コメント:

テムセルはいわゆる移植後の拒絶反応に対して効果を示す製品です。

これまでの2製品は「自家」でしたが、テムセルは日本初の「他家」になります。

つまり採取する対象は患者さん自身ではなく、健康な成人になります。

 

健常成人から採取した骨髄液よりヒト間葉系幹細胞(MSC)を分離・拡大培養し、その細胞自体が有する能力を利用して疾病を治療するという作用機序を有しています。

品質保持のため液体窒素に入れて搬入、保管します。

 

 

ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」

・承認年:2015年

・企業:テルモ

・適応:重症心不全

・薬価:Aキット 636万円/Bキット 168万円

・一言解説:

世界初となる心不全用の再生医療等製品です。

こちらは自家細胞による製品となります。

患者さんの大腿部から採取した骨格筋に含まれる筋芽細胞(未分化で単核の筋細胞)を培養してシート状にした後、心臓表面にぺたっと貼り付けます。

 

この製品は薬機法が改正され、再生医療等製品の条件及び期限付き承認の第1号となった製品です。

症例数が少ない段階で条件付き承認したことから、その効果には疑問の声も上がっています。

ネイチャーからも何度かちくちく言われているところです。

 

ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞「ステミラック」

・承認年:2018年

・企業:ニプロ

・適応:・外傷性脊髄損傷(ASIA機能障害尺度が A 、 B または C

・薬価:1495万7755円(1回分)

・一言解説:

患者さんから末梢血や骨髄液を採取し、自己骨髄間葉系幹細胞懸濁液を作成します。

それを静脈注射すると、構成細胞が損傷部位へ集積し、神経栄養因子等を介した神経保護作用を引き起こし、免疫調節、神経系細胞への分化、その他複数の機序により神経症候を改善すると「推察」されています。

 

2016年の先駆け審査で指定された製品にもなりますね。

こちらも条件および期限付き承認されています。

承認の際の治験患者数は13名だけですが、そのうち12名で改善は確認されています。

他の製品にも言えることですが、この条件付き承認の是非は難しいところですね。

 

そしてこの製品、承認当初は札幌医大付属病院でしか実質使えませんでした。

現在はどうなのでしょうか。

使える範囲は広がっているのかな?

 

キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)「キムリア」

・承認年:2019年

・企業:ノバルティス

・適応:再発または難治性CD19 陽性の B 細胞性急性リンパ芽球性白血病( B-AL)L・再発または難治性びまん 性大細胞型 B 細胞リンパ腫( DLBCL)

・薬価:3349万 3407 円(1回分)

・一言解説:

ゾルゲンスマが出る前はこの薬の薬価が世間をにぎわせていましたね。

ゾルゲンスマの薬価でかすんでしまいましたが、それでも3,000万を超える薬価は衝撃的かもしれません。

患者さん自身の免疫細胞(T細胞)を取り出し、それを遺伝子導入により改変し、体内に戻すというユニークな対応をします。

遺伝子導入で改変されたT細胞が癌をやっつけに行くわけですね。

 

この治療は完全なるオーダーメイド治療ですね。

高い薬価ではありますが、治療は継続的ではなく、一度で済むのが特徴です。

なぜ一回で済むかというと、癌細胞のCD19を認識し攻撃する際に伝わる刺激により、CAR-T細胞自身が患者さんの血液内で増殖するためです。

なかなか面白いとは思いませんか?

 

 

ヒト肝細胞増殖因子( HGF )遺伝子治療薬「コラテジェン」

・承認年:2019年

・企業:アンジェス

・適応:標準薬物治療の効果が不十分で、血行再建術が難しい慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)

・薬価:60万 360 円(1回分)

・一言解説:

株券するのが得意なアンジェスが繰り出した渾身の一撃です。

プラスミドDNAを用いた画期的作用機序の製品ですが、思いのほか薬価が低く、ちょっとかわいそうな感じになりました。

 

しかし、製品自体の切れ味はそこまでなく承認後の症例集積も上手くいっていない状況です。

この製品にどこまでの意義があるかは個人的には少し疑問です。

別途記事で取り上げています。

 

・参考:

遺伝子治療薬コラテジェン(ベペルミノゲンペルプラスミド:アンジェス)の先行き – 

 

ウイルスベクター「ゾルゲンスマ」

・承認年:2020年

・企業:ノバルティス

・適応:脊髄性筋萎縮症

・薬価:1億6707万7222円

・一言解説:

約1億7,000万円という超高額薬ということで世間の注目を浴びました。

原理上は1回の治療で完結するというコスパの良さと、投与方法の簡便さ、利便性の向上が売りです。

開発は多少ごたごたしましたが、これまでの治療の常識を変える、画期的な新薬となったのではないかと思います。

別途記事で取り上げています。

 

・参考1:

億越えの世界一高価な遺伝子治療薬ゾルゲンスマ承認、薬価はどうなった?(ノバルティス) 

・参考2:

超高額薬ゾルゲンスマ、なぜ高い?薬価が決まるまでの軌跡とトラブル –

 

ヒト(自己)角膜輪部由来角膜上皮細胞シート「ネピック」

・承認年:2020年

・企業:J-TEC

・適応:角膜上皮幹細胞疲弊症

・薬価:組織運搬セット428万円/培養角膜上皮パッケージ547万円

・一言解説:

患者さんから採取した角膜輪部組織より分離した角膜上皮細胞をシート状に培養したものを製品とします。

角膜上皮幹細胞疲弊症患者の眼表面に存在する結膜瘢痕組織を除去後、この角膜上皮細胞シートを移植することにより、移植された角膜上皮細胞が生着・上皮化し、角膜上皮が再建されるとされています。

別途記事で取り上げています。

 

・参考:

角膜を再生せよ!眼科領域国内初の再生医療等製品、ネピックのお話(J-TEC:7774) –

 

 

まとめと所感

今日は日本において承認されている9つの再生医療等製品について簡単に見てきました。

再生医療等製品の区分は思ったより広く、実際にも色々な種類の製品があることが見て取れるのではないでしょうか。

有効性が優れているものもあれば、何だか微妙なものもあり、日本における再生医療等製品の開発の在り方について、考えさせる事例もありますね。

 

医薬品も再生医療等製品も、製品を上市させることがゴールではない」と思います。

それが患者さんに使われて、患者さんの病気が治癒したり、軽快したり、それによって患者さんの生存年齢やQOLが改善しなければなりません。

つまり患者さんに利点がなければならないのです。

 

日本は国民皆保険制度であり、国が医療費の負担の大部分を担っています。

患者さんが支払う医療費には限度額もあり、高額な医薬品の費用を担うのは国です。

言い換えれば税金で支払うわけです。

 

さほど患者さんの利益にならない高額医薬品というのは、果たして存在価値は、開発する価値はあるのでしょうか

再生医療等製品を世界に先じて開発していくことは素晴らしいことですが、「製品を上市すること」をゴールとして、「患者さんのためという本質的な目的」を見失わないようにしなければならないと思います。

 

COVID-19の治療薬やワクチンも「承認すること」が目的になっていませんか

なんて、ちょっと問うてみたくもなりますねー!

 

 

・・・あとどうでもいいですけど、上の製品紹介。

2つ名みたいでかっこよくないですか?

モンハンちっくな。

え?かっこよくない?

あーそうですか、残念です。

 

参考

・AMED:2019年度 再生医療・遺伝子治療の市場調査 最終報告書

令和元年度(2019年度) 再生医療・遺伝子治療の市場調査 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

・PMDA Home page

新再生医療等製品の承認品目一覧 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

 

 

※当ブログにおける見解は個人的見解であり、所属する企業の見解ではございません。また特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。