るなの株と医療ニュースメモ
株や医薬品関連ニュースに一歩踏み込みます!
医療の話題

【薬価】角膜を再生せよ!眼科領域国内初の再生医療等製品、ネピック(J-TEC)【適応】 

f:id:Luna1105:20200408220011j:plain

少し前にJ-TECが眼科領域の再生医療等製品「ネピック」の製造販売承認を取得したのをご存知ですか?

J-TECと言えば、アビガンで話題の富士フイルムの子会社ですね。

富士フイルムさんも手が広いですねー。いまや一流製薬会社です。

今日はそのネピックの概要や再生医療等製品の治験のお話をしていきます。

最近コロナの話題ばかり取り扱っていたので、ちょっと箸休めにどうぞ。

ネピックの概要

ネピックは自家培養角膜上皮になります。

自家培養とは「患者さん自身から細胞を分離してそれを使う」ということです。

ネピックでいえば、患者さん自身の角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をシート状に培養していきます。

 

つまり、ネピックは「患者さんごとのオーダーメイドになります。

そのため準備に時間とコストがかなりかかるというわけです。

その分自分の細胞を使うわけですから、免疫反応等の副作用のリスクは下がります

適応と作用機序

適応は「角膜上皮幹細胞疲弊症」です

作用機序としては、「角膜上皮幹細胞疲弊症患者の眼表面に存在する結膜瘢痕組織を除去後、角膜上皮細胞シートを移植することにより、移植された角膜上皮細胞が生着・上皮化し、角膜上皮が再建される」とのことです。

まあイメージ通りの作用と考えてよいでしょうね。

なお「角膜上皮幹細胞疲弊症」とは角膜輪部が傷害され、角膜上皮幹細胞が完全に消失する疾患です。

高度な眼球癒着や角膜混濁を呈し、視力障害、失明に至る重篤な疾患群と言われています。

有効性と副作用

角膜上皮幹細胞疲弊症のStageⅡ-Ⅲの患者さん10例のうち6例が、StageⅠAまで回復したとのことです。

従来であれば免疫拒絶反応やドナー不足などで有効な治療法がなかったところ、改善が認められる代替治療ができたのは有用なことですね!

たった10例のデータしかありませんが、副作用は9例で認められました。

主な副作用は角膜上皮欠損が7例、点状角膜炎が6例です。

特に際立った副作用はないと思われます。

再生医療等製品の治験の特性/条件付き期限付き承認

再生医療等製品は通常の治験のように何百例もの患者さんを必要としないケースが多いです。

費用の面でも疾患の面でも難しいからですね。

そうすると症例数が少なくなるので、当然統計学的な有意差を出すことが困難となります。

 

ネピックの場合は10例だけです。

しかしそれでも当局は通してくれます。

PMDAは再生医療等製品には甘いのです。

事前面談も優しいのだとか。いいな。

ただし当然その場合は、承認後にデータを蓄積するように条件付き期限付きとなります。

例えばアンジェスのコラテジェンとかですね。

ただコラテジェンは今のところ症例集積があまり進展していないようですが。

ネピックの主な条件は下記のとおりです。

  1. 治験症例が極めて限られていることから、原則として再審査期間が終了するまでの間、全症例を対象に使用の成績に関する調査を実施することにより、本品使用患者の背景情報を把握するとともに、本品の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本品の適正使用に必要な措置を講ずること。
  2. 本品の製造過程にフィーダー細胞として用いられているマウス胎児由来3T3-J2細胞にかかる異種移植に伴うリスクを踏まえ、最終製品のサンプル及び使用に関する記録を30年間保存するなど適切な取扱いが行われるよう必要な措置を講ずること。

要は「全例調査」と「30年保管」です。

なかなか厳しい条件ですよね。

データが少ないわけですから、それだけ慎重に使えということです。

大規模な人数で治験を行っても、市販後に予期していなかった副作用が出ることもあります。

ましてや10例しかやってないわけですから、そのリスクは十分にありえるわけです。

再生医療等製品はその特性上、アンメットメディカルニーズを満たすようなニッチな適応になりがちではありますが、本当に効果があるのか、費用や安全性と釣り合うのかは慎重に判断していく必要がありますね。

ネピックの薬価

2020年5月13日にネピックは無事に保険適応されました。

組織運搬セットが428万円、培養角膜上皮パッケージが547万円の合計975万円です!

費用対効果は対象外となりました。

眼のiPS細胞について

大阪大学と言えば、3/24にロートさんがiPS細胞のIRを出していましたね。

参考:眼の分化誘導に有用なiPS細胞の作製に成功 | ロート製薬株式会社

眼の分化誘導に有用なiPS細胞の作製に成功したそうです。

この研究の成果により、角膜内皮細胞や角膜実質細胞など、眼科領域の再生医療に応用可能な細胞の分化誘導研究が促進されることが期待されます。

自家由来は前述の通り、準備にコストと時間が掛かりますので、iPSで片付くならそれは良いことです。

もちろんiPSならではのリスクもありますが。腫瘍化とか。

ロートさんが再生医療に取り組んでいるとは知りませんでした。

他にも肝硬変にチャレンジしているようです。

最近はどこのメーカーでも再生医療に乗り出してきていますね。

まとめ

眼科領域国内初の再生医療等製品「ネピック」について見てきました。

私は眼がよくなくて、普段はコンタクトで家では眼鏡なのですが、普通の近視が回復するようなお薬も創っていただきたいところです。

うーん、どこに頼めばいいのかな?

とりあえずロートさん頑張れ!

参考

再生医療等製品(添付文書) | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

【再生医療等製品】日本で承認された9製品を見てみよう!【2020/6/25現在】  先日の記事では、再生医療等製品の基本や開発トレンド、課題について考えてみました。 今日は現在日本で承認されている9製品について、どこ...
【細胞】再生医療等製品ってなに?どんなものが含まれるの?【遺伝子】 COVID-19に対して間葉系幹細胞を用いた治療が進んでいるとか、遺伝子治療薬のゾルゲンスマが1億を超える薬価がついたとか、再生医療等...