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【あなたの名前はどこから?:3】抗うつ薬の名前の元ネタ・由来と簡単な解説

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記事ストックの消費が激しい今日この頃。

軽くかけてそこそこ受けもよい、このシリーズを再度引っ張ってまいりました。

今日は抗うつ薬から12個ピックアップしました。

CNS(中枢神経)領域は私の得意分野でもありますので、各カテゴリーに軽い解説を加えております。

というよりかは、面白い名前があまりなかったので、仕方なく解説を加えてお茶を濁しています!!

SSRI

まずはSSRIについて見ていきましょう。

SSRIはSelective Serotonin Reuptake Inhibitorsの略です。。

つまりセロトニンの再取り込みを阻害することで、神経におけるセロトニンを増やすお薬ですね。

ルボックス

名前の由来は「成分名であるFluvoxamineに由来」となります。

シンプルで分かりやすい系統ですね。

SSRIでは一番古い薬ですね。

パキシル

名前の由来は「成分名であるparoxetineに由来」となります。

うーん、これもシンプルなお名前。

やや古めの薬で離脱症状や消化器系統の副作用は強いですが、抗不安作用が強いと言われています。

ジェイゾロフト

名前の由来ですが「JZOLOFTのJは Japan の頭文字Jを示しており、 ZO はラテン語で心や気分、 LOFTは持ち上げるという意味」を持っています。

・・・そうです!

海外ではゾロフトなんですね!

敢えてジェイを付けたところに、日本への愛を感じます。

そしてラテン語の意味からつける辺り、なかなかおしゃれですね。

ロフトはお部屋のロフトの語源かな?

 

レクサプロ

名前の由来について説明する前に本剤の由来をご説明します。

レクサプロは一般名をエスシタロプラムといいます。

ルネスタ(エスゾピクロン)のところでご紹介したことを覚えておられるでしょうか。

エスシタロプラムはシタロプラムのS体なのです!

 

そのため名前の由来としては、「シタロプラムの販売名“CELEXA”(米国)とうつ病治療の新しいステージへの前進を意味する“PROCEED”を組み合わせて」命名されました。

こうやってみると、覚えやすい名前だと思いませんか?

ブログを読まれている方に薬学生の方はあまりおられないような気がしますが、こうやって元ネタ探ると覚えやすいですよ?

SNRI

次にSNRIについて見ていきましょう。

SNRIはSerotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitorsの略です。

つまりセロトニンに加えてノルアドレナリンも増やすお薬です。

ノルアドレナリンを増やすと意欲や認知機能(作業記憶や集中力)が改善するとの報告もあります。

トレドミン

名前の由来は「Tolerance is dominant(忍容性が優れている)」という意味からです。

個人的にはこの自信のある命名、好きですね。

ただ後述のサインバルタと比べると、だいぶ作用が弱いのです。

精神科の先生方とお話しする機会がありましたが、効果が弱い印象というのは一致していました。

(だから治験では扱いやすいんですけどね。)

サインバルタ

名前の由来は「洋名Cymbaltaの発音を日本語で表記したもの」です。

サインって読めるのですね?

シムバルタじゃだめ?

この薬は認知機能改善に効果があるとの論文を見たことがあります。

大うつ病は緩解した後も認知機能が落ちた状況が続き、社会復帰の妨げになることもありますので、その部分をフォローできるのはいいですね!

イフェクサー

イフェクサーはこの系統に珍しくカプセル剤ですね。

EFFEXORの“or”は“実行する者”を意味する接尾辞であり、efficacy(有効性)に関連する“effex”を実行する者という意味で命名された」とのことです。

かっこいいですね!

「有効性を実行するもの」ですよ!!

ファイザーさんは命名センスが好きです。

NaSSA

NaSSA(ナッサ)について説明致します。

NaSSAはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略です。

Aが小文字なのはandだからなんですね。

作用機序はややこしいのですが、ノルアドレナリンα2を阻害してα1への作用を増強する(ノルアドレナリン作動)とセロトニン5-HT2A,2C,3をブロックして、5-HT1への作用を増強する(セロトニン作動性)です。

要はセロトニンとノルアドレナリンの働きを増やすということですね。

この系統はリフレックスのみです。

リフレックスはヒスタミンH1をブロックする作用もありますので、眠気の副作用が見られます。

ですので、睡眠薬代わりに出されるDr.もおりますね。

なお治験ではこの睡眠作用から実薬の判別がしやすかったとの逸話があります。

盲検暴いちゃだめですよ?

リフレックス

名前の由来は「RE(REMISSION;寛解 RECOVERY;回復) + FLEX(FLEXIBILITY;しなやかさ・柔軟性)→ REFLEX」です。

こう、なんか反射しそうなお名前ですよね!?

トリンテリックス

トリンテリックスは武田さんから昨年販売開始された新しいお薬です。

カテゴリーは何になるのでしょうかね?

個人的にはSSRI+抗不安薬みたいなイメージがあります。

セロトニンを増やすとともに各セロトニン受容体に直接作用する効果があります。

一部認知機能の改善に効果を示したとの報告があります。

審査報告書を読みましたが、PDQ-9では有意差出せていますね。

海外ではうつ病の症状である精神症状/身体症状/認知機能の3 面に好影響が期待できることから、

3 を意味する「tri」と、優れた抗うつ薬を意味する「brilliant」、「excellent」から「rint」と「x」を付けて命名されたとのことです。

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ドグマチール

ドグマチールは面白いお薬です。

低い用量では胃腸障害や大うつ病に適応があり、高用量では統合失調症に適応があります。

恐らくドパミンをどうにかしているのではないかと推測されますが、詳細な作用機序は明らかとなっていません。

SSRI等の副作用である消化器症状の予防も兼ねて、一緒に出すDr.もおりますね。

ですが、名前の由来は分かりませんでした。すみません。

一般名はスルピリドなので、結構劇的ビフォーアフターなんですけどねー。

可愛い名前だったのに、どうして悪い感じになってしまったんでしょうか。

ルピリンとかスルピンじゃだめ?

そういえばドグマってドラクエにもいましたね。同じ語源だったりして。

レスリン

レスリンは抗うつ薬というより、低めの用量で睡眠薬として出されるケース多いイメージのお薬ですね。

すみません。こちらも名前の由来は見つからなかったのです。

ご存知の方は教えてくださいな。

なお一般名はトラゾドンです。

こちらは恐竜みたいなお名前から、キュートな小動物系になりましたね!

エビリファイ

エビリファイはもとは統合失調症の薬で、ドパミンD2受容体のPartial Agonistですね。

要はドパミンが不足している時は補い、過剰な時はブロックすることでドパミンを調節してくれるのです。

大塚さんはこの薬の開発が上手で、大うつ病に適応を広げてきました。

名前の由来は「Abilify(~することができるようにする)」からです。

精神疾患による不自由からの解放をイメージさせるお名前ですね。

 

※留意点

三環系と四環系のお薬は量が多いのと、主流ではないので今回は省きました。

また大うつ病の増強療法に用いる薬剤は抗うつ薬から除いています。

でもエビリファイは大うつ病の適応あるし、今回のカテゴリーで取り扱いました。

 

所感

うーん、この系統のお薬はあまり面白いのなかったですね。

でもせっかく調べたので、記事にしてしまいました!

 

抗うつ薬の開発は日進月歩!

数個の新薬が鋭意開発中ですので、数年後には治療薬が変わっているかもしれませんね。

精神・神経疾患は目に見えない疾患が多いですが、QOL(生活の質)に与える影響は甚大です。

治療薬も疾患の根本的な解決に至らず、精神・神経疾患はアンメットメディカルニーズとなっています。

 

生存に直接かかわるものでなくとも、患者さんのQOL改善に向けて治療薬を開発していくことは、製薬会社にとって非常に重要な使命です。

CNS系統のお薬は開発が難しいですが、武田さんや大塚さん、最近は塩野義さんなど、力を入れている企業も多いですので、ぜひ応援していきたいと思います!

みんながんばれ!!

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