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あなたのカルテが役に立つかも?リアルワールドデータ(RWD)の活用事例のご紹介

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リアルワールドデータって言葉をご存知ですか?

日本語に訳すと「現実世界のデータ」ですね。

 

これまでご紹介してきたような臨床試験(治験)は限られた患者さんに対して、限定された条件下で行うものであり、得られるデータは、ある種のクローズな世界におけるデータになるわけです。

 

治験はクローズな世界ですが、医薬品が世に出れば様々な方に使用されます

つまり治験の世界から外に出た、現実世界におけるカルテの情報や処方実態、治療効果、副作用等の様々なデータ

これがリアルワールドデータというわけです。

 

治験で得られるデータを補足する目的の一つとして、このリアルワールドデータが用いられ始めています。

リアルワールドデータは様々な活用事例があり、また活用にあたり問題などもあるのですが、今日はその辺りの小難しいお話は置いておいて、「リアルワールドデータがどんな感じで使われているのか」という触りについて、軽くご紹介してみようと思います。

比較的重い内容かもしれませんので、厳しい方は活用事例だけでも眺めて頂けると、雰囲気がつかめると思います!

 

目次

 

リアルワールドデータの概要

リアルワールドデータについてもう少し詳しく見てみましょう。

リアルワールドデータ(Real World Data:RWD)を定義づけすると、「臨床現場で得られる匿名化された患者単位のデータ」ということができます。

そしてこのリアルワールドデータから導かれるエビデンスをリアルワールドエビデンス(Real World Evidence:RWE)と言います。

ビッグデータという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、リアルワールドデータといえば主に医療情報に関するものを指しているといっても過言ではないでしょう。

 

リアルワールドデータは治験で得られるデータと異なり、かなり「暴れたデータ」です。

治験においては非常に丁寧に情報を収集し、完全性・正確性・信頼性を確保していきますが、RWDはいわば実臨床下のデータをかき集めたものであり、完全性や正確性、信頼性は確保されているとは言えません。

しかし日常診療の現場から得られる「外部妥当性の高いデータ」ということができます。

 

もっと簡単に言えば、「精密ではないけど現実に近い一般化しやすいデータということですね!

実臨床から集めたので当たり前といえば当たり前ですね。

 

Five toos:治験の問題点

次に上記に挙げた治験におけるクローズなデータの問題について見てみましょう。

厳密な管理の下で定められたルールに従って実施される治験においては「Five Toos」という問題が知られています。

Five Toos 

・対象被験者数が限られている(Too few)

・治療や併存疾患そして年齢等に制限が設けられている(Too simple)

・治療効果評価の期間が短い(Too brief)

・対象に小児や高齢者が含まれることは少ない(Too Median-age)

・腎機能や肝機能に障害を有する被験者や妊婦が除外される(Too narrow)

  

治験は選択基準・除外基準によりターゲットを絞っていますので上記のようなToosがあるのです。

これはある意味仕方がないことです。

なぜなら、有効性と安全性評価の成功確率の向上や、被験者保護の観点において必要なものであるからです。

だってそれまでの非臨床のデータで全て補えるわけではないですからね。

いきなり妊婦さんや高度腎機能障害患者さんに、治験薬を飲ませるわけにはいかないのです。

 

一方、治験の登録基準に含まれない背景を有する患者さん、小児や妊婦さんに投与した情報というのは医薬品が上市された段階では不足しているものです。

先日、RMP(医薬品リスク管理計画書)についてご紹介しました。

あそこでも不足情報について記載されていましたよね

【レムデシビル】医薬品リスク管理計画(RMP)とは?ベクルリーを例に見てみよう! 

 

このような状況において、治験実施が困難となるような患者層に対して、リアルワールドデータが活用できると考えられています。

このような事例も含めて、何個か活用事例を見てみましょう

 

 

リアルワールドデータの活用事例

抗凝固薬の臨床試験と実臨床の相違

抗凝固薬「ダビガトラン」「リバーロキサバン」「アピキサバン」には、臨床試験において「「消化管出血」の頻度が既存薬「ワルファリン」に比べて増えると報告されていました。

ところが、医薬品として上市された後に各国で検証された実臨床のデータからは、これらの薬における消化管出血がワルファリンに劣るとの結果は得られなかったのです!

つまり臨床試験のデータが覆ったわけですね。

 

人種差の発見

治験においてはワルファリンにおける頭蓋内出血の頻度に人種差はありませんでした。

ところがJ-RHYTHM registryにおける研究において、日本人に対して欧米人と同等のコントロール濃度でワルファリンを使用すると、頭蓋内出血の頻度が高まることが明らかになりました。

つまり臨床試験では認められていなかった人種間差が、実臨床で確認されたのです!

これは臨床試験より母数(N数)が多くなったことにより、人種差を見つけることができた事例ですね。

 

経験則の裏付け

産婦人科では、母体に「熱発があり、熱圧が高く、頻脈である」場合、母体の胎盤に炎症があるため、母体や胎児への危険を配慮して帝王切開などで早めに子供を取り出すのが通例となっていましたが、その炎症が本当に起こっているのかを示すデータは存在しませんでした

これを証明するために、産婦人科のデータベースを使って「本当に母体に炎症があったのか?」「産婦人科の判断は正しかったのか?」を明らかにする研究により、産婦人科が危険と判断した母体の86~90%には、実際に炎症を起こしていたと判明しました。

つまり産婦人科の通例、慣習としての判断は、データとしても正しいことが証明されたのです!

 

更なるワクチンの効果の検証

混合型肺炎球菌ワクチンが利用可能となった後、公的ワクチン接種制度やガイドラインが制定されたことによる急性中耳炎(AMO: Acute Otitis Media)の疾病罹患、通院及び関連治療実施の経年的変化の評価を目的として、リアルワールドデータを用いて研究が行われました

結果として、中耳炎の手術の件数は著しく減少したことが示唆されました。

 

リアルワールドデータを用いた検討により、医療政策施行に伴う罹患減少だけでなく、行動変容への影響についても情報を確認することが可能となったということです。

 

保険適応の効果の検証

ヘリコバクター・ピロリについて、保険適応される前と後の感染率と除菌療法の動向を調査しました。

結果として、保険適応後のほうが感染率が低下し、除菌療法の実施率が上昇したとの結果が示唆されました。

つまり保険適用がヘリコバクター・ピロリの除菌療法の浸透を後押しし、将来の有病率の著しい低下をもたらすことが推測されたということです!

 

 

まとめ

今日はリアルワールドデータの概要と、みなさまのカルテ情報がどんな形で活かされてきたかといった簡単な事例をご紹介させて頂きました。

私は結構面白いと思いますけど、みなさまはどうですか?

興味持てる内容はあったでしょうか?

 

冒頭でも述べましたが、リアルワールドデータは他にもたくさんの活用事例(疫学研究や医療経済学的評価等)があり、今後の活用方法についても様々な検討がなされています

一方でリアルワールドデータの活用に際しても個人情報の取り扱いやデータの取り扱い方法等、多くの問題が議論されている状態です。

今日はそのような部分をカットし、分かりやすいお話に論点を絞ってご紹介させて頂きましたが、機会がありましたら、もう少し踏み込んでご紹介させて頂きたいと思います。

 

臨床試験が重要であることは何度も主張させて頂いておりましたが、だからといって臨床試験で全てが片付くわけでもありません

今後このリアルワールドデータを始めとしたビッグデータの活用により、臨床試験データを補う動きが活発になってくるのではないかと推測しています。

 

また既存の薬を他の薬に適応を変化させる、ドラッグリポジショニングも活発になるかもしれません。

BCGワクチンが抗がん剤に変身!薬の再開発、ドラッグリポジショニングとは?事例も紹介

例えば胃薬を使っている方で、他の疾患の罹患率が有意に低かったとしたら、胃薬がその疾患の治療に対して効果があるのかも?なんてことも見えてくる可能性があります。

 

21世紀ももう1/5過ぎています。

技術の進歩は日進月歩ですね。

シムシティがCities skylinesに進化したのを見ると、ここから10数年で薬の開発の流れが大きく変わったとしても、私は何も驚きませんね。

情報に置いて行かれないように、そして変遷する環境に適応できるように、私も新しい情報をインプットしつつ、記事にも挙げていきたいと思いますー!

 

参考

・Real World Data解析の実際 RWDに触れてみよう

(日本製薬工業協会、2017年3月 Ver.1.0)

・製薬企業におけるRWDの活用促進に向けて~現状、課題、論点整理、将来展望

(日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会2020年 4月)

 

 

※当ブログにおける見解は個人的見解であり、所属する企業の見解ではございません。また特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。