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【添付文書の読み方】レムデシビルを例に「医薬品の添付文書」を読み解いてみよう!

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みなさんは医薬品の添付文書はご存じですか?

医薬品や医療機器に「添付」されている書類で、効果や副作用、用法用量、使用上の注意等が記載されている重要な公的文書です。

医師や薬剤師でなくともPMDAのホームページから誰でも簡単に閲覧できます

今日はみなさんが興味津々(と思われる)COVID-19治療薬「レムデシビル」の添付文書を例に、どんなことが書いてあるか大事なポイントにしぼって見ていきましょう。

それだけだとつまらないので、間にまめ知識というか小ネタも挟んでいきます。

参考リンクからレムデシビルの添付文書を開いて読むと、より分かりやすいかと思います。

※本記事はレムデシビルの添付文書の代わりとなるものでなく、あくまで例として読み解いているだけです。医師や薬剤師の方で本記事を参考に投与するようなことはまずないと思いますが念のためご留意ください。

 

目次

  

レムデシビルの添付文書

参考リンク:

PMDAにおける新型コロナウイルス感染症対策に係る活動について | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

※関連製品の承認情報のところにPDFへのリンクがあります。

 PDFなので直リンは避けています。

 

 

薬効分類名

その医薬品の分類カテゴリーが示されています。

レムデシビルやアビガンは抗ウイルス薬、アクテムラはヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体、イベルメクチンは駆虫剤といった感じで、いわゆる何の薬かわかるようになっていますね!

 

名称

名称は一般名と製品名(販売名)が記載されます。

レムデシビルが一般名で、ベクルリーが製品名ですね。

 

一般名とはいわゆる有効成分のお名前です。

レムデシビルというのは医薬品の成分自体を指しているのですね。

雪見だいふくを「餅に包まれたバニラアイス」と言っているようなものです。

 

製品名とは製薬会社がそれぞれのセンスで名づける名前です。

餅に包まれたバニラアイスに「雪見だいふく」と名付けるということです。

 

インタビューフォームを見ると名前の元ネタが書いてあったりして面白いですよ

私も4つほど記事にしていますので、よかったらご覧ください。

サイトマップ: 医薬品の名前/化合物の由来シリーズ(真ん中辺)

  

警告

致死的または極めて重篤かつ非可逆的な副作用が発現する場合や、その恐れがあり注意が必要な場合に記載されます。

要は守らないととんでもない事態になることです

ここが変わるようなレベルの事態があると、緊急安全性情報「イエローレター」が発出されます。

タミフルが有名ですね。

緊急安全性情報(イエローレター)・安全性速報(ブルーレター) | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

 

レムデシビルは急性腎障害や肝機能障害の副作用が確認されていますので、投与前や投与中は毎日腎機能や肝機能を確認するように記載がありますね!

 

禁忌(きんき)

患者の症状、原疾患(対象となる疾患)、合併症(今も罹患中のもの)、既往歴(過去に罹患しており今は治っているもの)、併用薬剤等から、当該医薬品を投与するべきではない患者さんについての情報が記載されます。

これを破ると非常にクリティカルな事態になる恐れがあり、医師も薬剤師も最新の注意を払っていますね。

 

レムデシビルは「現状」薬物相互作用は確認されておらず、禁忌として指定されているのはレムデシビルにアレルギーのある患者さんだけです。

ただ肝機能/腎機能に悪影響を与える恐れが確認されていることから、今後情報が蓄積されれば、重度の肝機能障害や腎機能障害が禁忌となる可能性はあるかしれませんね。

 

効能又は効果

承認された効果や効能が記載されます。

 

レムデシビルの場合はご存じのとおり、SARS-CoV-2 による感染症ですね!

適応追加するとこの部分が増えます。

例えばアビガンはインフルエンザに適応がありますが、SARS-CoV-2 に対する効果が認められれば、ここに追加されるわけですね。

 

どこかで述べましたが、この適応というのは非常に重要です。

例えばある疾患における適応で、「重度の」「他の薬で効果不十分な場合に限る」といった修飾語がついてしまったら、それだけで対象患者は減少してしまいます。

しかし治験において、対象患者を狭めずに広く取ることで、いわゆる効きにくい患者がたくさんエントリーされてしまえば、治験の失敗確率が上がるわけです。

そのため例えば基準内でもなるべく重症患者は避けるといった手法があります。

このあたりの「兼ね合い」が臨床試験成功のコツでもあります。

要は基準の中で「上手に」エントリーするわけですね。

 

 

効能又は効果に関連する注意

効能効果につく但し書きです。

 

レムデシビルの場合は、下記の2点が記載されています。

1.有効性と安全性に関する情報が「極めて」限られているので、最新の情報に基づいて慎重に投与してね!

2.現時点では原則として、酸素飽和度 94%以下、酸素吸入を要する、体外式膜型人工肺(ECMO)導入、侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者を対象に投与してね!

NIAIDのACTTの対象患者が重症の患者であったため、限定された患者への効果しか分かっていないからこその記載でしょう。

今後中等症対象の試験結果が判明すれば、この部分は広がるはずです。

恐らく今月中に速報ぐらい出るのではないかと踏んでいます。

 

用法用量

読んで字のごとく、どのくらいの用量をどのくらいの期間使えばよいか記載があります。

 

レムデシビルの用法用量を抜粋すると下記になります。

・成人には投与初日に 200 mg を、投与 2 日目以降は 100 mg を 1 日 1 回点滴静注
・小児には投与初日に 5 mg/kg を、投与 2 日目以降は 2.5 mg/kg を 1 日 1 回点滴静。
総投与期間は 10 日までとする。

小児の投与量が規定されていたのは驚きましたね。

ADME(体内における薬の動き:吸収/分布/代謝/排泄)は分かっていないようですが、動物実験結果からシミュレートしたようです。

ただし小児への投与は推奨されないとあります。

10日間というのはACTTやSIMPLE試験における投与期間と同じですね。

 

用法及び用量に関連する注意

用法用量につく但し書きです

 

レムデシビルの重要なポイントを抜粋してみましょう 

30 分から 120 分かけて点滴静注する

アビガンと異なり、点滴静注が必要な点はなかなかに厄介ですね。

重度の患者が対象なので、今回の適応に限れば大した問題にはならないかもしれません。

静脈から入れる場合は吸収や代謝の面で問題がありませんので、100%体内に投与されます

飲み薬は胃で分解を受けたり、全部が吸収されなかったり、肝臓で代謝されたりと色々とダメージを受けて、100%吸収されることはありません。

この服薬した薬剤が体循環に移行する割合を「バイオアベイラビリティ」といいます。

 

ECMO 又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されていない患者では5日目まで、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する
SIMPLE試験において、5日投与と10日投与で有意差がなかったため、5日でも大丈夫ならそれでいいよ!ということですね。

これは良い結果という解釈で問題ありません。

 

慎重投与

投与に際して注意が必要な患者さんについて記載されています。

例えば、副作用が早く発現したり、副作用が発現しやすかったり、重篤な副作用が発現したり、蓄積毒性が見られる場合などですね。

禁忌よりも弱いけど注意してね!という感じです。

レムデシビルの場合は記載がありませんね。

これは安全というより情報がないだけと推察されます。

 

重要な基本的注意

重大な副作用や事故を防止する上での大事な注意事項について記載されています。

用法用量や効能効果に関すること、検査値について等の注意が記載されます。

 

レムデシビルの記載を少し抜粋してみましょう。

投与経験が極めて限られておりこれまでに報告されていない副作用(重篤なものを含む)が生じるおそれがある。

本剤を投与する場合には、患者の臨床症状、臨床検査値について、適切なモニタリングを行いながら慎重に患者を観察すること。

臨床検査値は毎日確認すること。

副作用が認められた場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を継続すること。

 

要はデータが本当に少ないので慎重に使ってね!!ということです。

また警告と同様に肝機能、腎機能について毎日確認する旨の記載があります。

 

特定の背景を有する患者に関する注意

特定の患者さん(腎機能や肝機能が悪い)場合などで注意が必要な場合に記載されます。

レムデシビルは 腎機能や肝機能が悪い場合は投与を推奨していなかったり、治療上のベネフィットがリスクを上回る場合のみ投与するように記載があります。

 

 

妊婦/授乳婦/高齢者/小児

 上記に該当する方はデータが少なかったり、体内動態やおなかの赤ちゃんやミルクへの移行等から、投与に注意が必要な場合があり、その旨が記載されます。

レムデシビルに場合はまとめると下記のとおりです。

・妊婦/妊娠可能性のある方:ベネフィット>リスクの場合のみ投与

・授乳婦:治療上の有用性や母乳栄養の有益性を考えて、授乳を続けるか検討(まず継続しないかと)

・小児:ベネフィット>リスクの場合のみ投与

・高齢者:患者の状態を見ながら慎重に投与 

 

相互作用

他の医薬品を併用することにより、当該医薬品または併用薬の薬理作用の増強または減弱、副作用の増強、新しい副作用の出現または原疾患の増悪等が生じる場合です。

 

学術的には2つのケースがあります

薬物動態的相互作用(pharmacokinetics)

吸収、分布、代謝、排泄(ADME:後述)の過程でおこり、他の薬物の体内動態に影響をあたえる作用のこと

代謝酵素の阻害により血中濃度が上昇した場合とかですね。

グレープフルーツと降圧剤等がこれにあたります。

 

薬力学的相互作用(pharmacodynamics)

同じあるいは逆の薬理作用(あるいは副作用)をもつ医薬品を投与することにより、作用が過剰に発現したりあるいは減弱したりすること

睡眠薬の効果がコーヒー(カフェイン)で減弱した!とかですね

 

 

相互作用は上記のとおり、医薬品だけではなく食品やサプリメントでもありえます。(グレープフルーツ、納豆、セントジョーンズワート等)


相互作用には「併用禁忌」と「併用注意」があり、併用禁忌は併用厳禁となります。

併用注意については状況により併用されることもあります。

 

レムデシビルの場合は臨床における相互作用のデータはありません

Vitroでは多少データがあります。

 

副作用

簡単に言うと、本来その医薬品に期待していた作用以外の作用のことです。

主に有害な作用となりますが、この副作用を主作用に転用して、他の薬にしてしまう場合もあります。

詳しくはドラッグリポジショニングの記事をご覧ください。

BCGが抗がん剤になったりして面白いですよ。

 ・参考:

BCGワクチンが抗がん剤に変身!薬の再開発、ドラッグリポジショニングとは?事例も紹介 - るなの株と医療ニュースメモ

  

レムデシビルの場合はまだ情報が限られており、引き続き情報収集中とあります。

因果関係不明ですが注意が必要な事象として、下記が挙げられています。

急性腎障害、肝機能障害、Infusion Reaction(注射後の反応:個人的にはどうでもいい)

 

薬物動態

一言でいえば、薬を飲んだ後に「体内でどのような動きをするか」ということです。

もう少しかっこよく言うと、生体に投与された薬物が、吸収されて体循環血液中に入り、生体内に分布し、肝臓などで代謝され、尿中などに排泄されて生体内から消失する過程のことです。

吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)の頭文字をとってADME(アドメ)とも呼ばれます。

 

ここは専門的なので詳細は飛ばしますが、レムデシビルはt1/2が0.98h、血しょうタンパク結合率は87.9%、加水分解で代謝、尿中排泄率74%でした。

 

臨床成績

 有効性や安全性に関する臨床試験の成績になります。

別記事で解説していますので、詳細は省略します。

・参考:SIMPLE Study

レムデシビルの臨床試験結果まとめと所感(ギリアド:重症例のオープンラベル試験) - るなの株と医療ニュースメモ

・参考:ACTT

レムデシビルのプラセボ対照二重盲検試験結果まとめと所感(NIH) - るなの株と医療ニュースメモ

 

これまで見ていなかったデータとしては人道的見地から行われた投与経験のデータがあります。

信頼性のあるデータではなく、いわゆる投与経験の蓄積のようなものですが、163例投与のうち、77例(47.2%)の患者が酸素療法の状態の1段階以上の改善が認められたとのことです。

 

またエボラ出血熱の試験の際に行われた、健常成人に対するデータも記載があります。

 

薬効薬理

その薬の作用機序についての記載があります。

作用機序というのはその薬の顔なので、有効性や副作用を考える上で大事な項目ですね。

レムデシビルはプロドラッグなので、体内で活性化してATPの類似体として、RNAポリメラーゼによって合成されるRNA鎖にATPと競合して取り込まれます。

その結果RNA合成が上手くいかなくなり、ウイルスが増殖できなくなるということです。

要はRNAポリメラーゼの阻害ですね。

細かいデータは他に任せるとして、省略します。

 

承認条件

承認にあたって試験の実施等の条件を付された場合には、その内容が記載されます。

通常はあまり記載のない項目ですが、レムデシビルの場合はここが最も重要と言っても過言ではありません

 

重要なポイントをまとめてみました。

医薬品リスク管理計画(RMP)を策定の上、適切に実施すること。
・症例データが集積されるまでの間は、可能な限り本剤が投与された全症例について副作用情報等の本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集する。
・あらかじめ患者又は代諾者に有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、文書による同意を得てから初めて投与されるよう、医師に対して要請すること。
・資料の提出の猶予期間は、承認取得から起算して9カ月とする。

ギリアドさんはこれからが大変ですね!

がんばれー! 

 

 

まとめ

今日はレムデシビルを例に添付文書の記載事項について見てきました。

みなさんの興味が医薬品に集まっているうちに」取り上げたかったネタであります。

だって平時では誰も気にしないでしょ?

私だって家買う時ぐらいしか、ローンの勉強しないですもの。

 

添付文書はその医薬品のことを知るにはお手頃な文書かと思います。

もう少しランクアップするとインタビューフォームや、ちょっと毛色が異なるものでは以前紹介した審査報告書等もあります。

いずれも下記で検索できますので、この機会にご自身の興味のある医薬品や服薬されている医薬品について調べてみるのも面白いと思います。

相互作用や体内動態について理解できれば、おくすり手帳の重要性も認知され、もっと広がるかなー?とおぼろげな期待を抱いております。

 

調べた結果、疑問が生じるようでしたら、ぜひ薬剤師さんに質問してみてください。

きっと喜んで解説してくれるはずです!

薬剤師のみなさまはぜひともよろしくお願いいたしますね!

 

参考

・添付文書検索:

添付文書情報メニュー

・特例承認:

特例承認ってなに?なぜアビガンではなくレムデシビルなの?その妥当性は?

・医薬品の承認申請後の流れ:

医薬品の承認申請から販売開始までの流れとは?一般的な流れを解説

・参考図書

 

※当ブログにおける見解は個人的見解であり、所属する企業の見解ではございません。また特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。