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液体のりの成分ががん治療で脚光、ホウ素薬剤のステラファーマ(ステラケミファ:4109の子会社)

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少し前に大和のり(液体のり)ががん治療に応用される!なんてニュースを耳にされませんでしたか?

私はそのニュースを聞いて、「へぇーすごいなー!」ぐらいしか考えていなかったのですが、今回ちゃんと調べてみて、臨床試験まで行きつく可能性を見いだせたので、ご紹介させて頂きます。

 

まず前提としてですが、液体のり自体ががんに効くわけではありません。液体のりはがん細胞に対して「のり」のように働くのです。液体のりを食べても効果は全くありません

ですので、液体のりの活躍を語る前に、まずは基本となる治療原理を簡単に見ていきましょう。

※正確に言うと接着させるわけではないので、「のり」ではないのですが、薬剤の滞在時間を増加させるという意味で「のり」と表現しています。

 

ホウ素と中性子

治療の主体となるのはホウ素化合物になります。

この療法はホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)と呼ばれます。

原理としては、体内に注入したホウ素薬剤をがん細胞に取り込ませて、体外から中性子線を患部に照射し、その際に生じるホウ素(ボロン10)と熱中性子との核分裂反応を利用してがん細胞を選択的に破壊する手法になります。

利点としては、がん細胞のみをピンポイントで攻撃できるため、通常細胞への傷害性が少なく、副作用が少ないとされています。

 

この中性子捕捉療法用のホウ素化合物をBPA(ボロノフェニルアラニン)と言います

BPAは長い時間がん細胞に滞留することができないこともあるため、なるべく長く滞留させることができれば、治療効果の更なる上昇が望めると考えられてきました。

 

 

液体のりの活躍

そこで活躍するのが液体のりの主成分であるPVAになります。

PVAは液体のりとしてだけではなく、医薬品の添加物としても用いられている汎用性の高い物質です。

このPVAを前述のBPAとくっつけたところ、がん細胞に取り込まれるホウ素量が約3倍に向上し、細胞内での維持期間も増加したのです!

この作用はin vitroだけではなく、in vivoのマウス試験でも実証されました。

 

ステラファーマについて

ステラファーマはステラケミファ(4109)の子会社でメディカル部門を担当している会社です。

今回話題となったのは液体のりの活躍ですが、この会社はのりの会社ではなく、ホウ素薬剤に強い会社なんですね。

 

ホウ素薬剤の製造には、濃縮ホウ素(ボロン10)を生成する技術が必要となりますが、国内で唯一ボロン10の濃縮プラントを保有している会社になります。

別件になりますが、ステラファーマは大阪府立大学や国立がんセンターなどと治験を実施中です。

今後実際に上市までこぎつける可能性も十分にあると考えてよいと思います。

 

まとめ

液体のりとホウ素のコラボについてまとめてみました。

近年は「薬そのものの活躍」だけではなく、「薬をどう活躍させるか」といった技術の進歩も著しいですね。

 

このような研究成果は「基礎研究」の上に成り立っています

基礎研究はすぐに画期的な活躍にはつながらないことが多く、地味なことが多いため、目先の成果を求めて基礎研究費を削減する動きもあります。しかしそれはイノベーションを創出する根底の力をそいでしまうことになります。

研究者の方々は、従事されている研究にどんな意味があるのかを発信してくださっていますが、そこに意味を見出すことが私たちにとって難しいこともあるかと思います。

 

でも私は「きっと意味のない研究なんてない!」と思います。意味がないと思うのは「受け手にそれに意味を見出す力がないだけ」かもしれません。

国や行政はぜひ基礎研究にも力を入れて頂きたいですね。

そして基礎研究に従事される方々、私は応援しています!