るなの株と医療ニュースメモ

株や医薬品関連ニュースに一歩踏み込みます!

膵炎治療薬ナファモスタット(フサン)、コロナウイルスに効くというけど、適応追加は難しい?

 f:id:Luna1105:20200321225658j:plain

巷で話題の膵炎治療薬ナファモスタット。

コロナウイルスに効くらしいということで、作用機序や背景情報についてまとめました。

個人的には今後の開発の問題も踏まえて、うーん。本命とまでは言えないかな?

といったところです。

 

目次

  

要約

・ナファモスタットは急性膵炎、DICの治療薬

・ナファモスタットは長年使用されており、安全性情報は十分

・ナファモスタットは大した副作用はない

・ナファモスタットはコロナウイルスの膜融合を阻害する

・まだまだ臨床研究レベルであり過信は禁物

 

 

 

ナファモスタットとは?

ナファモスタットは膵炎の急性症状の改善や汎発性血管内血液凝固症(DIC)に適応を持つお薬です。

古くから使用されているお薬で数多くのメーカーが後発品を出しております。

そのため安全性も十分に確認されているお薬と言えますね。

 

作用機序(急性膵炎/DIC)

急性膵炎やDICに対する作用機序は、「タンパク分解酵素を阻害し、血小板凝集を抑制する」です。

これがコロナウイルスに対する効果といったい何の関係があるのか!?

と思われますよね。

 

・・・「直接は」関係ありません。

だいぶ前ですが、ドラッグリポジショニングを話題に上げたのを覚えておられますか?

ハンコ注射のBCGが膀胱がんに使われていますよ!というお話です。

要はあれと同じなのです。

 

なぜかこの膵炎治療薬のナファモスタットがコロナウイルスに効いたということなのです。

ではコロナウイルスに対する作用機序はどのようなものが推定されているのでしょうか。

 

作用機序(SARS-CoV-2)

今回の新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2がヒトに感染するためには、細胞の表面にある受容体タンパク質に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが必要となります。

ナファモスタットはこの膜融合を阻害するのです。

 

もう少し詳細に述べると、コロナウイルスのSタンパク質が、ヒト細胞由来のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)によりS1とS2に切断されます。

その後S1が受容体であるACE2受容体に結合します。

もう一方の断片であるS2はヒト細胞表面のセリンプロテアーゼであるTMPRSS2で切断され、その結果膜融合が進行していきます。

SARS-CoV-2の感染にはACE2とTMPRSS2が気道細胞において必須となるというわけです。

つまりACE2とTMPRSS2の生成に必要なタンパク分解酵素を阻害することで、ナファモスタットはコロナウイルスの感染を防いでいるのではないかというわけです。

タンパク分解酵素の阻害がこんなところで活きてくるとは!

 

なおナファモスタットは以前ドイツの研究者が報告していた類薬のカモスタットの1/10の濃度で効果があるそうです。

だからナファモスタットが絶対的に優位かというとそういうわけではなく、カモスタットは飲み薬、一方ナファモスタットは注射剤なため利便性には劣ります

 

副作用

頻度の高い重大な副作用はありません。

長年使用されてきており使用成績も多く、安全性に関しては問題ないといえるのではないかと思います。

 

臨床試験

ClinicalTrials.gov(アメリカ:NIH)で検索してみましたが、ナファモスタットのCOVID-19に対する臨床試験は登録されていませんでした。

まだアカデミアの臨床研究レベルの出来事ということです

Home - ClinicalTrials.gov

 

 

今後の展望と所感

ナファモスタットのコロナウイルスに対する効果の検証はあくまで臨床研究段階です。

ドラッグリポジショニングは特許の問題が絡みますし、現状は製薬会社による臨床試験段階ではありません。

私見ですがジェネリックメーカーの日医工等が開発を担えるとも思えません。

 

仮に臨床研究で有効性が見いだせたとしても、通常のルートで承認を得るにはかなり時間的かつ金銭的なハードルがあります

国が特例で何とかするかもしれませんが、その頃にはレムデシビルが追加適応を取っていると推測します。

よって、ナファモスタットは特効薬になりうるというよりかは、数ある効果的かもしれない薬剤の一つというのが私の見立てです。

 

東大の素晴らしい研究を活かすためには行政の力が必要不可欠ですが、これまでの薬事行政の動きを考えると、なかなか一朝一夕にはいかないのではないかなと思います。

アカデミア発のお薬かつドラッグリポジショニングというのは大変なハードルなのです。

後学のためにもこのナファモスタットの動きは注目しております。

 

何だか候補化合物のダメ出しばかりしていて性格が悪い感じですが、開発に携わる立場から言うと、そんな簡単にはいかないでしょ?という感覚がどうにも拭い去れません。

研究室で素晴らしい結果が出ても、上手くいかないことなんて星の数ほどあります

水を差すのも何ですが、過信して失望するのも悲しいので、私の記事も含めて、情報はニュートラルに受け止めて頂ければと思います。

 

0508追記

東大で臨床研究が開始されました!