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FDAのファストトラック(fast track)とブレークスルーセラピー(Breakthrough therapy)ってなに?違いや利点は?

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製薬会社やバイオ系のIR、医療ニュースを見ていると、「FDAのファストトラックで指定されました!」とか「ブレークスルーセラピーに指定されました!」とか記載されているのを見ることがあるかと思います。

 

「へぇーすごいなー」と思う人が多いと思いますが、「何がどうすごくて」「どんな利点があるか」ご存知ですか?

そもそもその二つの違いについてはご存知ですか?

 

今日はこのFDAの2つの制度について、軽く整理してみたいと思います。

他にも優遇制度はありますが、まずはよく出てくるこの制度の違いや概要を見ていきましょうという趣旨です。

 

目次

  

 

FDA(Food and Drug Administration)

まず始めにFDAについて見ていきましょう。

FDAはアメリカ保健福祉省の組織の一つで、食品医薬品局(Food and Drug Administration)の略です。

 

日本においては厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)みたいな組織ですね。

FDAの中でも、新薬の承認審査を主に担当する組織はCDER(Center for Drug Evaluation and Research)になります。

 

でも、だいたいみんなFDAがどうたらと言いますね。

FDAとかFBIとか、横文字3文字ってかっこいいですよね!

あれ?私だけ?

 

FDAのるなです!(日本語)とかちょっと言ってみたい!

 

 

ファストトラック(fast track)

Fast track is a process designed to facilitate the development, and expedite the review of drugs to treat serious conditions and fill an unmet medical need.

 

さて、それではこのFDAの新薬承認に関する優遇制度について見ていきましょう。

まずはファストトラック(fast track)についてです。

ファストトラックを直訳すると「出世街道」、つまり「承認への近道」というわけです。

 

原語に記載のある通り、重篤な疾患に対する治療薬やアンメットメディカルニーズ(満たされていない医療ニーズ、薬が存在しない希少疾患など)に対する治療薬を、優先的に審査します!という制度です。

 

この制度に指定されるためには「優れた有効性」「重篤な状態に対する改善作用」等が示されていないといけません。

この制度の目的は上記のような重要な薬剤をいち早く承認して、患者さんのもとに届けることです。

 

これに指定されると何がお得か、ということですが、Rolling reviewができるという点がまずあげられます。

全部の項目が終わってから全部審査!ではなく、特別に一部のセクションから先に審査と相談を実施できます。

 

※Rolling Review,

which means that a drug company can submit completed sections of its Biologic License Application (BLA) or New Drug Application (NDA) for review by FDA, rather than waiting until every section of the NDA is completed before the entire application can be reviewed. BLA or NDA review usually does not begin until the drug company has submitted the entire application to the FDA

 

また開発や審査の迅速化措置が受けられます。

 

ちなみにこのファストトラックはFDAから自動で指定されるのではなく、企業側からリクエストする必要があります。

リクエスト後、60日以内に結果が判明します。

 

ファストトラックに指定されました!の報告をするのは、そのリクエストが受託されたため、ということですね。

なお要件を満たさないことが判明した場合、この認定は取り消されます

 

 

 

ブレイクスルーセラピー(Breakthrough therapy:画期的治療薬)

A process designed to expedite the development and review of drugs which may demonstrate substantial improvement over available therapy.

 

次にブレイクスルーセラピーについて見ていきます。

既存治療を大きく上回る可能性のある薬剤のための制度になります。

 

ファストトラックも混同されがちですが、ブレイクスルーセラピーはファストトラックとは別物です。

そしてブレイクスルーセラピーはファストトラックより格上の扱いを受けられます

(後ほど述べますがブレイクスルーセラピーの優遇内容にファストトラックも内包されているのです。)

 

要件としてはファストトラックと似ていますが、「臨床的に重要な評価項目が、既存の治療法と比較して実質的に改善したことを示す予備的な研究データ」が必要になります。

要は原語にある通り、既存の治療より素晴らしい治療である、ブレイクスルーをもたらすものであるということをデータで示さねばならないのです。

 

その点、信頼性(上市可能性という面で)はやや高いと言えるのかもしれません。

しかし、先日例に上げたとおり、第2相できれいな成績を出しても、第3相で失敗するケースは少なからずあります。

 

ブレイクスルーセラピーに指定されると何がよいかということですが、まずファストトラックと同様の優遇は受けられます。

その上でFDAから優先的に指導が受けられます

一言でいえば、「FDAがより一緒に頑張ってくれるようになる」ということです。

 

例えば、臨床試験のデザインや用いるバイオマーカーなどについて、FDAとより密にコミュニケーションをとって相談していくことができます。また医薬品の開発計画全般についても毎週や2週に1回会議を行うことができます。

「えっ?その程度なん?」と思われる方もいるかと思いますが、これは結構な利点なのです。

 

ブレイクスルーセラピーもFDAから自動で指定されるのではなく、企業側からリクエストする必要があります。

リクエスト後、60日以内に結果が判明します。

 

場合によってはFDAから「申請してみては?」というお誘いがあるケースもあります。

また本リクエストはこの制度の活用を鑑みて第2相終了までに対応することが推奨されています。

なお要件を満たさないことが判明した場合、この認定は取り消されます

 

他にも「迅速承認(Accelerated approval:サロゲートエンドポイントや暫定的な効果で承認を受けられる)」と「優先審査(Priority review:承認審査が6か月で終了する)」がありますが、それはまた別の機会にしますね。

 

ちなみに日本の優先審査制度の一つである「先駆け審査指定制度」については、何回か記事で取り上げました。

制度の解説については、下記の記事などをご参考ください。

そんなにいじめないで!「先駆け審査指定制度」と「ゾフルーザ」(塩野義製薬:4507)

 

 

まとめ

アメリカの新薬審査関連制度であるファストトラックとブレークスルーセラピーについてまとめてみました。

ファストトラックやブレークスルーセラピーの概要について、何となくご理解頂けましたか?

 

細かい制度や優遇内容については、FDAにおける審査制度の説明まで話が飛ぶので、今回は触れないようにしています。

あくまで2つの違いとさわりを理解頂き、IRや医療ニュースを読むときの助けとなれば。くらいの感覚で書きました。

 

少し古いデータにはなりますが、2015年の統計では、アメリカで承認された45の薬剤のうち、60%以上が何らかの優先審査制度(迅速承認と優先審査を含む)を活用していたとのことです。

結構多いですよね。

 

いずれの制度も指定される化合物は優れた医薬品候補と見てよいと思いますが、「必ずしも承認や成功が約束されているわけではありませんので、その点は留意しなければなりませんね。

 

この点、本当に大事です。

IRでファストトラックに指定されました!!とか言われたのを見た時、まるで承認が約束されたかのように喜ぶ方々を見たことはありませんか?

 

それは間違いです(断言)

指定されることが良いことには違いありませんが、承認されるだろうと舞い上がるのは早計というわけです。

薄氷の上で舞い上がっていると、氷が割れて冷たい湖に真っ逆さまということもあるのです。

 

ファストトラック程度のIRで噴き上げるのであれば私は一旦売りを考えます。

もっとも低位バイオの株価など、めちゃくちゃな動きをしますので、理路整然と考えること自体ナンセンスではありますね。

 

ただそんな時、自分はチキンレースに参加しているのだという自覚は持つべきです。

さもなくば、アキュセラやサンバイオ、アンジェ・・・(これはまだだった!)のように痛い目を見ることになります。

痛い目というか致命傷になりかねません。

 

余談ですが、FDAは事前相談の結果に沿って試験を組み、きちんと結果を出すことができれば、承認まではスムーズにいくケースが多いです。

ゴールポストを勝手に動かしたりはしない印象ですね。

 

白黒はっきりつけてくれる印象ということです。

後出しじゃんけんはあまりしてこないという感じでしょうか。

このあたりは外人っぽい?

こういうカテゴライズ化はあまり良くないのですが、感覚的にそう感じてしまいますね。

 

話は飛びましたが、今後IRや医療ニュースを読む際の参考にしていただけましたら幸いです。

 

参考

 

 

※当ブログにおける見解は個人的見解であり、所属する企業の見解ではございません。また特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。